Thursday, February 12, 2009

卒論へのコメント (2)

(1)の続き。

坂本華奈「珍敷塚古墳の3DCG復元とその問題点について」

坂本論文は、福岡県うきは市にある屋形古墳群のひとつで、ヒキガエルなどの絵で知られている装飾古墳である珍敷塚古墳の復元についての研究である。この古墳は現在、壁の一部しか残っておらず、また保護のため展示にも制限が加えられているという状況である。この古墳については、壁の絵をどのように解釈するか、という研究は多くなされているものの、石室などの全体的な構造については研究が進んでいるとは言えない。3DCGによる復元を試みることで、全体像の研究に資したい、というのが主旨。

時間をかけて作成したCGは、未完成ではあるが、その努力を多としたい。

問題点をあげれば、本研究の目的は序論では「石室や外形」「全体像を検討」となっているものの、論文の後半にはムービーについて議論が展開され、そこでは研究者以外の人(見学者)の利用(展示)も想定されているようである。結局、目的はどこにあるのか、はっきりしない。

また、どのような目的であるにせよ、ムービーの見せ方が論文に書かれているような方法でよいのかについては、単に先行事例を踏襲するだけでなく、もっと検討すべきであっただろう。

副査の高橋克壽先生からいろいろ貴重なアドバイスをいただけてありがたかった。可能ならば、ちゃんとしたものに仕上げて展示してみたいですね。

清水祥央「宮上茂隆案に基づく安土城の3DCG復元」

安土城の復元案については様々な説が出されているが、内藤昌氏の案がメジャーとなり、メディアを通じて広く知られている。しかし、内藤氏の説に対しては様々な批判がなされており、内藤説が一人歩きしている状況は好ましくない。清水論文では、内藤昌氏以外の有力な説として宮上茂隆氏の説を採用し、それによる3DCG復元を試みる。

研究史のまとめは、川村信三氏の「「史実」とは何か —安土城天主(守)復元「論争」の顛末—」(『歴史家の散歩道』所収)に大きく依拠している。


着眼点はおもしろいが、3DCGは完成にはほど遠く、また論文も単なる安土城研究史の概観にとどまっており、もう少し早く準備していればと悔やまれる。

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